小学生の頃英会話を習っていた。そこはキリスト教の教会で、だから使う教材も神様関係の内容が多かった。私はといえば、信仰に関しては丸っきり日本人のそれで、内容に違和感を感じてはいたものの、別段興味もなかった。
ただクリスマスには大きなクッキーをもらえて、キリストも粋なことをしやがるなと思ったものだった。
当時はキリストが神様だと思ったし。
で、ある日。
自分が好きな有名人の写真を持ってこいと宿題が出された。
いろいろ考えて持って行ったのが
ロベルトバッジョ(バッジオ)
小学五年にしてこの渋さ。
SMAPが大多数を占めるなか、一人ジャンプの裏表紙から切り取ったファンタジスタの写真を握り締める女子。
アメリカ人講師(注:美人)、困惑。
「ダレコレ?」
口には出さないが明らかに困っていた。
若いアメリカ人女性はサッカーをまったく知らなかったのだ。
そして次に困るのは私の方だった。
「じゃあその写真をノートに貼って、その人のプロフィールを英語で書きましょう」
え。
バッジョなんて英語でどうやって書くんですか…?
当時バッジョのスペルまでは知らなかった。餓鬼だ。
じっと固まる私。皆はすらすらローマ字でTAKUYAなどと書いている。
しゃらくせえ。
だから今でもSMAPは嫌いだ。
美人講師は代わりに書いてくれようとしたのか、質問が始まった。
「フーイズヒー?」
「フッ…サッカープレーヤー…イタリー…‥」
「ホワッツヒズネーム?」
「…ロベルトバッ…」
流石にバッジョなどという名前が英語ではないことを察していた私の声は尻すぼみだ。因みにサッカーをフットボールと言おうとして訂正したのも察して欲しい。
沈黙。
そして
「ア〜ハ?」
こんなに傷ついた「ア〜ハ?」は後にも先にもこの時だけだった。